目指したのは、「同じ景色を繰り返さない建築」
ニチハ
今回、株式会社Dry様の新社屋にサイディングを採用いただきました。建設の経緯からお聞かせいただけますでしょうか。
香月
Dry様が本社事務所を移転されるにあたり、設計を担当しました。
その際に「単なる事務所ではなく、企業理念やブランドイメージそのものを体現する拠点にしたい」というご要望をいただきました。
近年は採用活動においても「働く環境」が企業選びの大きな要素になっています。
社員の皆様が誇りを持てることはもちろん、求職者が「ここで働いてみたい」と感じられる空間にしたい—そうしたお考えを早い段階から共有していました。
そこで機能性だけでなく、企業イメージそのものを伝える建築を目指し設計にあたりました。
ニチハ
非常に印象的で美しい外観だと感じました。どのようなコンセプトなのでしょうか。
ミライアとメモリアがグラデーションのように移り変わるデザイン。
香月
計画を進めるなかで、Dryという社名にちなんだ何かがないかと考えていたところ、Don't Repeat Yourself(同じことを繰り返すな)という言葉を知りました。
人為的なミスを繰り返さず、常に改善を続けて安全性と生産性を高めていく—セキュリティや消防設備関連の事業を行うDry様の企業姿勢を表すのにぴったりだと思いました。
これはDry様の企業理念になり、やがて建物全体を貫く言葉へと育っていきました。
「同じ景色を繰り返さない建築」を建物のデザインコンセプトに定め、固定された一つの表情ではなく、見る位置や時間帯によって表情を変える建築にするための外壁材を検討しました。
さまざまな表情を見せる、一体感のある美しいファサード
ニチハ
サイディングを選定するにあたってのポイントをお聞かせください。
香月
建物自体は合理性を重視したシンプルな長方形ですので、コンセプトを実現するには反射と素材感を活かせる外壁材が不可欠でした。
そこで、鏡面仕上げのミライアとマット仕上げのメモリアの異なる質感を組み合わせました。
ミライアのことは以前から知っており、どんなシーンで使えるのだろう?と考えていたのですが、今回の物件にピタリとはまりました。
艶やかに景色を映すミライアと、光を抑えてしっとりと佇むメモリア—対照的な2つを融合させることで、時間帯や天候によって異なる表情を見せるファサードになりました。
色味の違う数種類の複層ガラスも組み合わせ、表情豊かに仕上がりました。
ニチハ
窓との一体感もすばらしいと感じました。施工や仕上がりについてはいかがでしょうか。
夜はDryのサインと照明により、昼とは違った表情に。
香月
四方合いじゃくりによるシーリングレス仕様で目地が目立たず、一枚の大きな面として外壁を構成できる点も大きな魅力でした。
設計において最も時間をかけたのは、パターンの検討です。
単純な繰り返しにならない構成を考え、一見すると自由に見えながら、全体としては秩序を感じられる—そのバランスを最後まで探り続けました。
完成した実物を見たとき、鏡面とマットの質感の違いが想像以上に美しく表現されていたことが印象的でした。
抑えられた目地により、一体感のあるファサードが実現できたと思います。
特に夜間は周辺の景色や光が映り込み、想定以上におもしろい表情を見せてくれました。
ニチハ
今回、ALCやメースなども検討されたと伺いました。サイディングのどんな点がメリットだと感じられましたか。
開放感と遊び心が融合したエントランス。
香月
サイディングはデザインの自由度が高く、コストと品質のバランスに優れている点が大きな魅力です。
近年は耐候性や防汚性能も向上しており、非住宅建築においても十分な性能を備えていると感じています。
目地や納まりの検討は重要なポイントですが、シーリングレス仕様などによって意匠上の制約も大きく改善されており、扱いやすくなりました。
サイディングは非住宅建築においてもデザインの主役になれる素材
ニチハ
非住宅建築におけるサイディングの評価はいかがでしょうか。
香月
デザイン性だけでなくコストや維持管理も重要なのが非住宅建築の特徴です。
サイディングはそのバランスに優れており、特に近年の商品は意匠性が大きく向上しています。
素材そのものが建築デザインの主役になれるレベルまで進化していると感じています。
今回のプロジェクトでは、ニチハさんの商品の特性がデザインの可能性を大きく広げてくれました。
とりわけミライアの鏡面仕上げとシーリングレス仕様は、これまでの窯業系サイディングのイメージを大きく変えるものだと思います。
ニチハ
ありがとうございます。最後に、弊社に期待することなどがありましたらお聞かせください。
香月設計企画様が運営するレンタルスペース「R906」にてお話を伺いました。
香月設計企画様が運営するレンタルスペース「R906」にてお話を伺いました。
香月
香月設計企画ではBIMを標準的な設計ツールとして活用しており、設計者だけでなく、お客様や施工者とのイメージ共有にも大きく役立っています。
今後はさらに非住宅向け商品の充実やBIMデータの拡充など、設計者がより活用しやすい環境づくりに期待しています。
ニチハ
弊社では、市場で幅広く採用されている主要BIMソフトウェアに対応したBIMデータをご意しております。
今後もぜひプロジェクトにお役立ていただき、一層の活用をご検討いただければ幸いです。本日は、貴重なお話をありがとうございました。