鞍ケ池公園キャンプフィールド整備事業
ニチハ株式会社

Designer's Voice ~サイディングの可能性~

公園のポテンシャルを生かす
自然を感じるサイディング

Nichiha Designer's Voice vol.3

愛知県豊田市 Siding Award 2021 非住宅部門グランプリ鞍ケ池公園キャンプフィールド整備事業 (PARKFIELD Snow Peak TOYOTA-KURAGAIKE ストア・レストラン棟)

Siding Award 2021 非住宅部門でグランプリに輝いた施工例をご紹介します。

    大和リース株式会社様(鞍ケ池公園ミライプロジェクト共同企業体 代表企業)
  • 大和リース株式会社 名古屋支社
    環境緑化営業所
    片桐 敦史 様
  • 大和リース株式会社
    設計推進部
    DX設計課
    山本 大二朗 様
  • デザイン監修
  • 海建築設計研究所
    中野 海太郎 様
  • GENERAL COMPANY Inc.
    小野 健 様

アウトドアを中心とした新しいライフスタイルの提案で公園をアップデート

ニチハ

鞍ケ池公園キャンプフィールド整備事業は、公募設置管理制度(Park PFI)でのリニューアルで、豊田市様の公募型プロポーザルだと伺いました。
※都市公園の魅力と利便性の向上を図るために、公園の整備を行う民間の事業者を公募し選定する制度。都市公園内に飲食店や売店等の収益施設を設置できる、飲食施設の充実など 利用者向けサービスが充実する、民間資金を活用することで公園整備・管理にかかる財政負担が軽減されるなど、公園の利便性、快適性、安全性が高まりながら、様々な課題が解決されるとして 注目を集めています。本制度を利用し、都市公園内に、カフェやショップなどの集客施設や、保育所やデイサービスセンターなど、地域の人が集う施設が続々と誕生しています。

メモリアが全面張りされたストア・レストラン棟。メモリアのマットな質感が、ほどよく抑制された個性的な外観を演出。

片桐

Park-PFIは、都市公園法の改正に伴い、公園に民間活力を導入することで賑わいを創出し、公園の利用・活用を増進させていくものです。 今回は、公募案件の一つに、キャンプフィールド誘致が挙げられていましたので、一番にスノーピーク様にアプローチして、共同企業体という形でご参画いただきました。 公園で野遊びを楽しむパークフィールドという取り組みは、スノーピーク様も初ということでしたね。

ニチハ

アウトドアに加えて、ワーケーションをはじめ、新型コロナウイルスの影響下で注目された新たな働き方への対応も考えられていますよね。

中野

スノーピーク様が掲げる「衣・食・住・働・遊」を通じた価値の提案の一環として考えました。いろいろ先読みするかたち対応できた施設になっていると思います。

アウトドアと地域の魅力に出会える風景とつながった商業空間デザイン

ニチハ

ストア・レストラン棟は、どのようなコンセプトで設計されたのでしょうか。

中野

スノーピーク製品のように、簡素で品格のある自然な意匠の建築を創り、外にいるような気分のまま、建物に入ってきて、公園の一角のように通り抜けていく、自然と人をつなぐ空間をつくりたいと考えました。

ニチハ

室内に一歩入れば、ひとつづきの細長い空間が広がっていますね。

天井の屋根下地材も塗装せずに使用し、構造材をデザインとして見せている。ムラやばらつきも製品の自然なかたちとして受け入れてデザインされている。

片桐

豊田市様もウィズコロナを踏まえた計画を要望されていましたので、室内のレイアウトでも、バッファーゾーンを設けて可変性を持たせています。 ストア部分を増やしたければエリアを広げ、レストランの席を増やしたければストアの部分に席を設けるなど、フレキシブルに配置を変えられるようにしています。

ニチハ

自然の素材が選ばれている中で、今回、窯業系サイディングを選んでいただいていますね。

中野

様々な検討条件の中で、自然な意匠の空間をつくるために、木材や金属などの自然素材とあわせて、素のかたちの工業製品素材を選び、新しい自然素材として扱うことを考えました。

ニチハ

メモリアのブラックを採用いただいていますが、決め手になったポイントを教えていただけますか。

遠くの山並みに陽が沈み、暮れなずむストア・レストラン棟の夕景。

中野

コーナー部分を含めて、シーリングがないディテールが可能なことも意匠的、性能的にメリットがありました。外壁は、全面メモリアのブラック一色で、一見すると真っ黒な壁面ですが、 割付を調整しながら横張りにすることで建物の水平性を強調するとともに、目地の流れにより、遠く地平線の風景に、無意識に視線が誘導されていくことを意図しています。

ニチハ

外壁は最初の提案から変更があったそうですね。

山本

当初はスギ板張りの外壁を想定しいていましたが、工期やメンテナンス性を考え、弊社がよく使用してきた窯業系サイディングをスノーピーク様や中野様、小野様に提案しました。

中野

キャンプフィールドは、公共のプロジェクトになりますので、耐久性、コスト、メンテナンス費用などに関しては、プロポーザルの段階から厳しく言われていました。

ストア・レストラン棟外観。

山本

さらに、今回はSDGsを見据えた事業の提案をしており、その中でニチハ様のオフセットサイディングは100%国産の木材チップが原材料として使われているため、CO2 を固定化する考えにより環境負荷の低減に配慮した計画を実現することができました。また、オフセットサイディングを通じて日本の森林資源を守り、地球温暖化防止に貢献する ニチハ様の活動は本事業のコンセプトにマッチしており、本商品を採用出来て良かったと思います。工期やメンテナンス性、耐久性の面においても非常にいい結果になりました。

中野

本計画では、窯業駅サイディングを背景として使っているため、意匠性を立たせたデザインではありませんが、外観に内在しているものを含めてご評価いただき嬉しかったです。 主役は、高台にある美しい景色とスノーピーク製品、美味しい食事、建物はそれらを際立たせる背景ですが、外壁のサイディングも含めてよい環境を作れたのではないかと思います。 みなさんに親しまれている身近な公園に、野遊びを楽しむきっかけとなる施設をつくり、新しい層の方にも、自然を感じる体験をしていただく。そういう当初の目的は、少しずつ 始められているのではないかと思います。