GROOVE玉出駅前テナントビル
ニチハ株式会社

Designer's Voice ~サイディングの可能性~

地域の世代と文化をつなぐ
新たなランドマーク

Nichiha Designer's Voice vol.4

神奈川県 Siding Award 2020 非住宅部門グランプリ交流拠点施設

Siding Award 2020 非住宅部門でグランプリに輝いた施工例をご紹介します。

  • 株式会社 小林建築事務所
    専務取締役
    湯山 泉 様
  • 設計室副主任
    渡邉 建夫 様

築300年の古民家や田園風景との調和を図る「田舎モダン」

ニチハ

御社が交流拠点施設に関わった経緯からお話しいただけますか。

湯山

こちらの施設がある開成町は、神奈川県の中でも小さな町で、北部地域には昔からの田園風景が色濃く残っています。 2015年3月に、町の北部全体を「あしがり郷」として活性化を進める目的で「あしがり郷拠点整備基本計画」が策定されたのがはじまりです。

ニチハ

「あしがり郷瀬戸屋敷」とはどういった建物なのでしょうか。

湯山

江戸時代に名主をつとめた瀬戸家の屋敷で、築300年の大変歴史のある古民家です。約1800坪の広い敷地には、かやぶきの大きな主屋、土蔵、薬医門、水車小屋、井戸などが残っています。 屋敷の入り口に門があり、その門前の敷地に交流拠点施設が建築されました。

ニチハ

計画・設計に入る段階では、どのような要望がありましたか。

オープン後は、若い方も良く訪れる交流拠点施設。提供/開成町都市経済部産業振興課

湯山

建物の用途に関しては「体験施設」「屋外に直売スペース」といったものを考慮してほしいという条件でした。

ニチハ

どういったコンセプトで設計されたのでしょうか。

湯山

開成町の町づくりには「田舎モダン」というキーワードがあります。新駅の開業によって都市化が進み、人口の増加率が県で一番と言われている南部と、 昔ながらののどかな環境が残っている北部を1つのキーワードとした「田舎モダン」は常に頭の中に入れていましたね。

瀬戸屋敷は、開成町北部金井島に所在した江戸時代、旧金井島の名主を代々つとめた瀬戸家が家屋を構えてきた屋敷。 提供/開成町都市経済部産業振興課

「水の流れ」からイメージされた人の集いが生まれる外観デザイン

ニチハ

交流拠点施設では、COOLイルミオ イルミオブラックをご採用いただきました。イルミオを選ばれた理由をお聞かせください。

渡邉

設計の意図である、周辺環境との調和はもちろんですが、新しい施設としてモダンな部分もあっていいのではと思いました。 シンプルな外装材を探した中で、はじめからイルミオとメモリアの2択でした。 マットな質感で落ち着いていながら、自然との一体感も調和を得られるということで、イルミオブラックを選びました。

ニチハ

建物のフォルムを見ると、施工の点ではご苦労も多かったのではないですか。

水の流れをイメージしたフォルムが印象的なウイング状の屋根。

渡邉

ウイングの屋根形状部分は木軸が放射線状になっていて、どうしても角度によって細かいピッチで納まりが変わっていくため、屋根と建物との取合い等では工夫が必要でした。

ニチハ

外観フォルムに合わせたウイング状の屋根は印象的ですね。

湯山

町の方から、水が豊かな地域だから水をテーマにした提案が何かできないか、というご意見をいただいたことがイメージの起点になっています。 水との連動を考えたときに、「水の流れ」から今のフォルムがすぐに思い浮かびました。急流なら直線的に流れていきますが、緩やかなところには溜まりができる。 それに人の流れを重ねて、人の集いができる、人が集まる、いい溜まりになって活性化に結びつけられたらと思ったんです。そういうイメージを持ってデザインしました。

ニチハ

最終的にサイディングを選ばれた背景には、サイディングの機能性、例えばメンテナンスのしやすさを期待された部分はございますか。

事務室エリアは内外装に異素材の外装材を使用。黒主体の外観のアクセントに。

湯山

そういう要素は大きいですね。当然、建物全体のプロポーションを含めて、設計する段階で自然の材料の使用も検討しました。 自然の素材を使ってもしっかり手を入れていければ問題ないのですが、計画修繕にはなかなか予算がつきにくいのが現状です。 建物の長寿命化を合わせて考えると、サイディングは最初の段階から選択肢の1つとしてありました。

ニチハ

公共施設などのデザインを行ううえで、何を大切にされていらっしゃいますか。

湯山

私としては、プランニングやデザインを考える前に、まず計画地に足を運んで、そこで土地が持っている歴史や風土、脈々と受け継がれている環境や文化というものを、 まずは空気感として感じることを大切にしています。環境に調和する建物についてはよく聞かれますが、何もなかったところに建物を建てれば、新しい環境をそこに作ってしまう。 であれば、その建物がランドマークとなり周辺に与える環境がより良くなるように整えていくという、それが永遠のテーマであり、我々の負っている責任だと思っています。

撮影:©BAUHAUSNEO